夜に煤けた歌の行方は/ホロウ・シカエルボク
、まだほんの少し、太陽の居ない時間には指先はかじかんでしまう、エアコンの室外機の上の猫にちょっかいを出しては逃げられる、必ず取り残される爪先のアイデンティティ、部屋の住人が訝しんで窓を開ける前にそこから立ち去らなくてはならない、誰だって権利を主張することに夢中なのだ…それは必ず見るもおぞましいかたちで語られる、誰のせいでもない、エゴというのは決まってそういうものなのだ、ようやく客を拾うことができたタクシーがエレガントな発進をする、五十m先の赤信号で誘蛾灯に吸い付く虫のように止まる、後部座席でスマートホンを眺めている、少し脂肪の付き過ぎた女の子、地に落ちた午前零時に君はどこへ行こうとしている?家に帰
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