壁/ひだかたけし
壁がある
どうしようもない限界だ
その先に広がる青々とした海原を
私たちは見ることができない
視界は閉ざされ
四月の気層の底に留まる
夜な夜な宇宙の突端に座り
爆発する星たちを見ていた
平安と調和に満たされ
私たちは、かつて私たちは
壁がある
五感という壁だ
その先に広がる広大な沃野を
私たちは見ることができない
視界は囲い込まれ
四月の気層の底で歯軋りする
私たちは行き止まり
私たちは見ず知らず
地球の上を彷徨って
ふるさとへの道は遠い未知
眩めく予感だけ膨らませ
立ち塞がる壁を見つめて
ただ立ち塞がる壁を見つめて
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