ワイジェの丘の戦い(十二)/朧月夜
アイソニアの騎士とフランキスでは、その立場が違う。
アイソニアの騎士は、今ではアースランテの千人隊長である。
部下の身を守らなければならない、という使命があった。
それに対して、フランキスは単なる聖騎士の一人だった。
(ここは、出来るだけ多くの兵を守ろう。
包囲陣はすでに崩されている。この以上の部下を亡くすのは、
エリス・ガザンデも望んではいないだろう。
我々は一刻も早く、先陣の隊と合流すべきだ)
「アイソニアの騎士よ、また逃げるのか?」フランキスはうそぶく。
「フランキスよ、一つだけ教えてやろう。
我々の本隊が向かっているのは、ここよりさらに北の地だ」
「そこがお前の墓所となるのだな?」フランキスは言った。
「違うな。屍となるのはお前のほうだ。
アースランテの兵も、この二年で相当の力をつけたのだ」
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)