パイロット・プラント/AB(なかほど)
 
き抜ける風は
いつでも同じ音になった



またひとつ山が消えました。



間違ってはいない
間違ってはいなかった
あの沈んだ顔で山を後にする幾人もの姿に
笑顔を取り戻させるはずだった

今では
オイル・ショック時代の風変わり
な史料としての説明板だけが貼られ

しかし
そんなことではなく
そんな小さなことではなく
もっと大切なことのために
大切な人達とその家族と
少なくとも
間違ってはいなかった




ついに

     最後の山が消えます。





ヒバリの声



天気の良い日
僕らのパイロット・プラント
無駄を究極に省いた姿は美しい

吹き抜ける風の音は
あの日から
変わらず



スーツの僕らが
いくら歳を重ねても
忘れないように

変わらず



   
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