ワイジェの丘の戦い(五)/朧月夜
ラジークは言った、「いいか。敵の全てを殲滅する必要はない。
我々はこれから、アジェスの森へと向かう。
そこには、無傷の四万のラゴス兵たちが待っている。
ラゴスは魔導に優れた国だ。アースランテなどたやすく葬れる」
その言葉をもちろん、強がりだと解釈した兵たちもいた。
しかし、ほとんどの兵たちは安堵し、歓喜した。
「俺たちは死なずに済むのだ。そして、最高の戦果を上げる。
ラジーク・ユーゲル万歳! あなたが隊長で良かった!」
その時、一つの声が響いた。「こんなところで会うとはな、宿命か?」
エインスベルにとっては、聞き知った声である。
すなわち、彼女の目の前にはアイソニアの騎士が立っていたのだ。
「わざと風の結界を作ったのか? わたしを生かしておくために」
アイソニアの騎士には、風と土の精霊の加護をうけた聖剣ゾフィアスがあった。
「愚かなことを。わたしは風の精霊ととりわけ縁が深かっただけだ」
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