僕は僕の歌を歌う下手くそでも/秋葉竹
下手くそな歌を
歌う喜びがあった
手に入らない美しいため息を
言葉に変える人に憧れた
悲しいけど窓を叩く風の音が怖くて
震えながらもう歌はうたいませんと
そう誓わされてしまった
深海をゆらゆら鮟鱇が泳ぐ息づかいで
でも
りりり ららら ろら?
るるる りりり ろろ?
ららら るるる らろ?
だろ?
でも
止まらない眼をして
歌うけものが足の小指の先に避難してでも
歌う意志を無くさずに保ちつづける
それを歌う喜びと僕はそう誓う
さざなみに突き刺さる小雨の優しさが
心臓を
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