赤いちりとり/そらの珊瑚
春は淡い
命がそこかしこに生まれては散る
風はそよぐ
樹々の葉がさざ波になる
風と水は似ている
そうかな
そうだよ
どちらも掴もうとしても掴みきれない
手のひらを開いたとたん
そこは
現実
脚立の上に赤い花が咲いたね
よく見てごらん、さあ、カーテンを開けて
違うよ、あれは赤いちりとり
それが
現実
わたしはいろいろ間違える
亡くなったのに生きている、だなんて
夢の中で
手のひらを開けば、羽音
色とりどりの小さなちり鳥たちは
この世の塵芥を食べて
柔らかなプラスチック製の羽で飛び立つ
そしてわたしは乗り遅れる
どこへ行こうとしていたんだろう
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