ワイジェの丘の戦い(二)/朧月夜
アースランテの攻撃は、クールラント軍が、
撤収の準備を終える前に始まった。
「いよいよか」ラジーク・ユーゲルは呟く。
ラジーク・ユーゲルは、この軍の全軍指揮を任されていた。
「良いか、荷物は捨て置け。まずは己の身を案じよ。
生きて、この包囲陣を突破することだ。心配ない。
アースランテの軍隊は我々とほぼ互角の戦力なのだ。
巧妙な罠が敷かれていない限り、確実に突破出来る」
ラジーク・ユーゲルの宣言に、クールラント軍は沸き立った。
その傍らで、ラジークは魔導士エインスベルに告げていた。
「一番防御の厚いところに結界を張れ。我々はそこを通って突破する」
「一番防御の厚いところですか。そこには多分、アイソニアの騎士が……」
「そうだ。そなたの宿命の相手。そして、フランキスの宿敵でもある」
「これは、予想外に大きな戦いになるかもしれませんね」
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)