線路と思い出/番田
を買って、リュックに紙袋ごと入れて持って帰ってきていた。見られて注目を浴びることが恥ずかしかったというのがある。予備校に行くための路線に乗っていると、シートの隣に座っていた男と目があったことがある。あのころクラスメートだった男で、彼はそこで映画のパンフレットを見ていた。でも、僕は映画は見なかった。彼と言葉を交わしたのはそれきりで、今頃、どこでどうしているのだろうと時々思うけれど、あまり意味がなかったし、僕は、映画はあまり見なかった。僕は今は線路沿いの物件に暮らしているのでそんなことを考えるのかもしれない。今日は暑すぎた。だから、窓を全開にしていたので、僕はそんなことを思ったのだろう。平静を保つには音がうるさすぎたのである。夏はどうなるか、先が思いやられた。先週末は川べりの道を歩いていた。そこに腰を下ろしているひとときを楽しむ時間も、もう、あまり長くはないのかもしれない。
戻る 編 削 Point(0)