明日消えていく空のことを/ホロウ・シカエルボク
僕は
ハープを叩き壊しながら血を流していた
そこに張られた弦が全て
僕の毛細血管だったと気づいた時には手遅れだったんだ
ねえ、血まみれの指じゃピッキングなんて出来ない
ただただ指が弦の上を滑っていくだけなんだ
夜の始まり、街の終わり
夢と現実のカット・イン、カット・アウト
通り過ぎた影は知り合いのようにも全くの他人のようにも見えた
僕は視界に意味を持たせないように歩いていただけだったから
そしてなにかに誘われて振り向いた瞬間に
そこには存在なんてものはなかったんだって気づくのさ
明日消えていく空のことを
僕は果たして君に歌えるだろうか
明日消えていく風のことを
明日消えていく雲のことを
そうして朝日が新しい意味を持つ時
僕はノスフェラトゥのように灰になるかもしれない
風が、ねえ
僕の身体を次々と舞い上げて
あたりはちょっとしたセレモニーみたいだ
知ってるかい
灰って意外と
たくさんの影を作るんだぜ
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