裏庭を越えて/木立 悟
中庭と廊下に
誰も居ないことを確認して
使うことのない鍵を握り
少しだけ明るい裏庭に出る
低い草と
色の無い花の間を抜け
影の無い径に出る
薄暗く揺れる午後に出る
葱の花が
径の両側に咲いている
見わたすかぎり曇りの風で
見わたすかぎり誰も居ない
誰にも見つからないように
誰かを医務室に連れていき
そのまま帰ればいいだけだったのに
気づけば鍵を持ったままでいる
散ったばかりの虹が再び集まり
中庭をすぎ 裏庭をすぎ
川を照らしては流れゆく
一度も振り返ることなく
羽のかたまりが陽の前にあり
午後を淡
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