イルカの思い出/板谷みきょう
 
気っ風のいい姉御肌のイルカは
年の離れた姉さんのようだった

今は
本当だとしても
いつかは
嘘になるかも知れない
想いを言葉に替えて
愛を口にするわ

だから愛は
体で確かめたいの

壊れ物に触れるように
真珠のような本当を
指先で優しく触れ続け

イルカは何度も
大きな絶頂に
潮を噴いた
シーツの海で
泳ぐように
ぬくもりを交わす

喘ぐイルカは
耐え切れずに身体を跨ぐと
しがみつき爪を立てた

それは日がな一日
若さからか
何度も繰り返され

いつもベッドは
海に変わる

何度目かの時
ホテルの部屋の電話が鳴る

『毎回、 ベッドが
びしょびしょに濡れている
今後も続くようなら
洗濯代を請求することになるので
今後は注意して下さい。』

そんな
イルカの体質に
すっかり
ぞっこんだった

思い出すと
数える程しか知らないが
官能的なイルカみたいな人と
出会ったことが無い

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