アルカイック・モノローグ/ただのみきや
自分の真中を巡っている
本の中で行方不明になった栞
荒れ果てて見つめている
月のように
足のつかない
すべて半開きの
声が迷ったまま
蔓草のように震える
青い頸動脈
光は展開した
石灰質の土手
男の連れた犬
その黒い尾の浮遊
桜の樹を嗅いで
花芽は瞑っていた
胎は先の宙
悲哀を宿し
発語の陣痛が
垂直に折れ曲がり
惜しむ間もなく
壁画を去る影
太陽のマスク
あらかじめ握っていた
石化した時間
万力のように
頬をたどる風
受け身で訪ね
呼ばわる名も知らず
塩の大地に倒れたなら
思考は気化し
肉体は記号化するか
そう言って真っ向から
ひややかな照明
《2022年4月3日》
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