小さい恋の詩(四)/朧月夜
 
アイソニアの騎士は、すぐさまその面影を追い払った。
エインスベルへの愛……それは無償の愛だ。
盟友と言っても良い。あるいは、戦友と言うべきか。
(いつか、彼女と争うことがなければ良いのだが……)

「あと五年ですね」イリアスは言った。
「そう、あと五年ですな」
その間に、彼はエインスベルのことを忘れられるのだろうか。
彼はそう思った。そこにはやはり、迷いがあったのである。

(それより先に、アースランテとクールラントの戦いが始まれば?
 俺は、エインスベルと戦わなくてはいけない宿命にあるのかもしれない)
「どうかしましたか?」イリアスは言った。

「いや、なんでもない。ただ、クールラントには強力な敵がいるのだ。
 わたしは、その者に勝てるという自信がない」
「そんな心配はございません」イリアスは信頼に満ちた表情で答えた。
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