夜 /山人
一日の襞をなぞるように日は翳り、あわただしく光は綴じられていく。
万遍のないあからさまな炎天の午後、しらけきった息、それらが瞬時に夜の物音にくるまれる。光のない世界のなかで、何かを照らすあかりが次々と灯される。
夜に寄り添う生き物たちは鼻を濡らし、唾液を充填していく。
何も見えない世界を夜と呼び、それは黒と決められていた。たがいの眼差しさえもみえない世界で、あかりを求め確かめ合う。夜の孤独に耐え切れず、すがるものを求めてはやがて沈んでいく。多くの魂が浄化と沈殿を繰りかえし人が生まれ死んでいった。今日も夜はしんしんと黒くあたりにたち込めて新しい物語を埋め込んでいく。
それぞれ
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