母はフェニックス/壮佑
 
朝8時の虎ノ門ニュースで解説していたが、忽然と消えた卵の行方を捜している母親が、自分は世界と捩れた関係にあるということが理解できないのは、母親には卵の抱いている密かな悪意が認知できないからだ。母親というものは卵と必ずしも親密とは言えない。なぜなら、卵は夜に人の捩れた夢を食べることによってのみかろうじて生きていけるからだ。巨大な赤い花弁の裏側に蓑虫のようにぶら下がっている群生タイプの卵では特にそれが著しい。母親もそのことに薄々気付いてはいる。その証拠として、母親も夜に人の捩れた生霊を食べることにより、朝になると決まって便意を催すことがあげられる。卵の悪意は捩れた生霊の中に入り込み、それを食べた母親の
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