蛍/山人
 
川原に浮かんでいるのは
ほたる
闇の空気を纏い
黒い重みに浮かぶ
森の深遠のそばで
悲しみの傍らで
現実の重みから脱皮して
ほたる  ほたるよ
粘る闇が重い空気と連結して
夜をもてあそぶ
刹那な記憶がよみがえる
脳天へとしぼり出される激情が
はじけて点となって
光となって
それぞれが飛び交う
私の決断と記憶が
断末魔のように飛び交う
それはひとつの魂のようで
流れる時間(とき)は水のように流れ
その上を蛍が徘徊する
さようなら
さようなら
さようなら

ぽかり ぴかり
 ふわり 

開拓村の梅雨の中休み、夜になると蛍を求めて僕らは表に出た

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