来訪者(六)/朧月夜
エインスベルには一つの覚悟があった。
この国を……クールラントを救おうと。
それはディペルスの街を救った時と同様であった。
恩は恩で返さなければならない。
「クールラントが我が命を狙うのであれば、
わたしはその手の届かないところに行くだけだ。
汝は、それが今だと言うのか?」
「はい、そうです」
ハザック・アザンとエインスベルは、
どうしても折り合いがつかない間柄であった、
アイソニアの騎士が亡命してから。
それは今生の別れのようでもあった。
アイソニアの騎士とエインスベルとは引き裂かれたのだ。
一つの陰謀によって。一つの企みによって。
「もう帰ってくれ。わたしはお前に用はない」
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