詩の日めくり 二〇一九年十二月一日─三十一日/田中宏輔
コンパスが股を開いて、小さなコンパスを産むように、お母さんがタコを産んで、それから、ぼくを産んだことにするといい。お母さんは、なんだって産むんだ。いままでも産んできたし、これからも海つづける。いや、産みつづける。なんちゅうか。それが出来上がったら作品はおしまいだ。お母さんといっしょ。ファックスの紙がなくなっていると、電話が告げているのだけれど、ぼくはファックスに切り替えたこともない。なんでも告げればいいというものではないと思う。もちろん、後ろでもかまわない。前でもかまわない。ファックスでさえなければ。國文學の編集長が、ファックスないのですか、とたずねられたので、ないのですよ、と答えた。「だって、フ
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