言葉の煽情的ボディライン/ただのみきや
 
闘魚=ベタ}を飲み干した
マリア像の形をしたキャンドルから煙草に火を移す
煙りの向こうの暗がりで抱き合う裸の男女は蒼白
誰かが耳元で囁いた 口もとは微笑んでいただろう
突然髪がチリチリ焦げる臭いがした
ふり返るとアルビノのニシキヘビを襟巻にした
女装の男娼と目が合った
流れる涙を青黒く描いたその瞳の奥に
子どもの頃一度だけ夢で見た蒲公英の丘が広がっていた
わたしの最初の恋人は人魚だった
性がまだ未分化だったあのころ
水に揺れる影は自分の方だったのかもしれない
不安によぎる鴉の濡れた眼差しこそが





ピアノ

白い階段は天使のよう
闇の底から生えて来て
光の先へと消えて行く
ぼくの頭の中で
ピアノはバラバラに壊れている
記憶の中の自分と目が合う時
ぼくは果たして何者だろう



               《2022年3月20日》









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