昨日、私は山に向かった/山人
もろとも山に運ぼうというのだから、足や心肺に負荷がかかるのは仕方のないことだった。
目的の休み場所までは、少し遅れ気味に到着した。緩登も終わり、いよいよ急斜面に入った。歩き出しが標高五〇〇メートルで、次のピークが約一〇〇〇メートルだった。一気に五〇〇メートルの標高差をかせがなければならないことになる。急な斜面では力はなるべくかけずにゆっくりと足を運んでいくことだ。心肺機能も筋力も体の重さもすべて普通よりも劣った状態であるから、こうして登るよりほかないのだ。
一〇〇〇メートルピークにようやく着いた。ピークはやはり霧に覆われ風も幾分吹いていた。尾根の雪堤は四メートルを超し、それが一部崩落してい
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