縁は異なもの/板谷みきょう
 
明日のライブの
ご挨拶にと伺ったのは
小さな喫茶店だった

開店間もない午前十時辺りなら
店も忙しくないだろうから
落としたての美味しい
深煎り珈琲でも注文して
店主のご機嫌を伺おうか

そんな目論見で
「営業中」のプレートの掛かった扉を
押して入った店内は薄暗く
BGMもまだ流れていなかった

そして
カウンターの奥には店主と
うら若き女性と黒人男性の
三名が立ち話をしていた

女性は明らかに泣いているし
どんよりと
気まずい空気が重苦しく
淀んでいる

その状況に
立ち尽くし怯んでいたボクを
店主が目敏く見つけると
事情を話してくれた

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