青空と焦土/木立 悟
 




水の弧に触れた指が
夜を虹を描き出した
風はここにとどまる
牙に爪に 傷になる


目の奥に羽ばたく星の蛇
霧を歩む双つの影から
無数の羽が生まれては消え
夜の輪郭を濃くしてゆく


焼けている
時間のはじまりに向けて
青が焼けている
誰もそばに居ない囁き


林檎飴の筆先から
何処にも行けない地図が生まれ
月あかりの森のなか
ひとりのための席がうまれ


川が運ぶ雪と枯葉
泡と涙と光の軌跡
空と同じ大きさの署名
空からずっと動かない


塩の湖の枯れ枝に
鳥の巣だけが残されて
遠い雨を聴いている
白煙が結ぶ指と指


左手を離せ 左目から離せ
水の歯 風の歯
光と痛みの奔流に立ち
消えゆく音に身体をひらく


径を数えまちがえて
金と緑は夜に出会い
互いを指で確かめあい
すべての迷路を越えてゆく


紅みがかった夜の震えが
羽と雪を流しつづけて
月を視ている声はひとり
青と源をうたいはじめる

















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