詩の日めくり 二〇一九年九月一日─三十一日/田中宏輔
ものである。
二〇一九年九月三十日 「胃カメラ」
きょうは、胃カメラだった。9060円。検査費用でいちばん高かった。
鼻にチューブを入れられながら、ピロリ菌がいますねと言われた。
二〇一九年九月三十一日 「考察」
思い出すことをやめたときにはじめて恋人は自分のもとから離れていく。それまでは思い出すたびに、その恋人の同じ顔を見ているのである。時がたち、自分が変わったり当時の状況の解釈が変わったりすると、恋人は別の顔を見せる。過去の状況で見受けられる恋人の別の顔ほど驚かすものはない。
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