詩の日めくり 二〇一九年九月一日─三十一日/田中宏輔
二〇一九年九月一日 「詩論」
音には意味がない。
二〇一九年九月二日 「詩論」
小学校時代に飼っていたカイコを思い出す。カイコは、飼っていた箱のなかに入れてやった毛糸の屑や色紙の紙片や布切れなんかをつかって、自分の繭をこしらえた。しかし、ぼくの自我は、万華鏡の鏡の筒だ。入れられたプラスチック片や毛糸の屑などを動かしては、いろいろなものに見えさせる。
二〇一九年九月三日 「キッス」
どんな唇がいいって訊かれたら、やわらかい唇と答えると思う。だれもぼくに訊かないし、ぼくもひとにたずねたこともなかったけれど。このあいだキッスをしていて、そう思ったのだ
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