美化推進委員会/ただのみきや
 

その分肌の感覚が鋭くて
気配どころか近づいて来る人の心
自分を抱っこする持ち主の心の声までが伝わって来て
皮膚の境界すらなく
いつも心が混じり合うように感じていた
持ち主の少女が年齢を重ねて大人になると
姿は変わらないが人形の心もまた共に成熟していった
長い年月が流れて持ち主の女が死んでしまうと
人形に触れるものはもういなかった
放置された人形はいつの頃からか
自分があの少女であって
少女の記憶を自分の記憶だと思い込んでいた
廃屋の中で服はすっかり腐食していたが
その瞳は今も美しく描かれた時と変わらず
光を通さない宝石のように
縁側の夕涼みの遠い記憶を照らす月のように




わたしにとって花はいつだって
微笑む盲目の少女
彼女たちは遠くから来た手紙や
水色の文学で身ごもってしまう



                 《2022年3月6日》







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