眼をやられた男/壮佑
ゴミ袋を喰い散らかす俺は
屍骸の毒で眼をやられた男だ
いつかもあった
無風の午後に
外海に向かう
堤防沿いの道を
野良犬から奪った卵を懐に
洞窟を行くように
手探りで歩く
海面を反射する光が
俺の背中を刺しても分かるもんか
突堤の先端に来れば
無風の時は終わり
向こう岸から吹き始める風と
萱の茂みのざわめきに混じって
たくさんの小さな声が
聴こえて来る
ささやかな宴の主は
奴らの卵を喰らうとしよう
遠い昔に
青い 青い 底なしに青い
空と海を見たことが
あったような気がして
ひとり笑いする
コンクリートの床に横たわり
俺は微睡に落ちてゆく
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