春を待つ/言狐
 
悲しみも、春が雪を溶かすように終わります。
なんて。月並みな表現で僕の悲しみを消すことはできませんでした。

現に、その冷たさはいつまでも僕の中にあって。
例えば、それは散歩道の自販機の下。とても見晴らしの好い駐車場。桜の綺麗な公園。

そう云えば、もうすぐ春が来ます。
僕の悲しみのによく似た、けれども綺麗な。
桜と澄んだあの空と同じ色を持つ君の悲しみに思いを馳せます。

自分の悲しみを汚いといった君に対して、僕は否定したかったけれど、美しいものを美しいと云うだけでは到底足りなくて。

悲しみも、春が雪を溶かすように終わります。
なんて、僕は云いたくないけれど。

何度でも、言葉をかえて、桜が綺麗だと伝える為に。
今度の春は君を花見に誘おうと決めた。
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