クシュリーとエインスベル(二)/朧月夜
「たしかに、エインスベルはレ・スペラスとの戦いで功をなしました。
しかし、それが本当に私情を廃してのことだったでしょうか。
エインスベルは、己の私益のために戦ったのではないですか?
それは、アイソニアの騎士にしても同じことです」
クシュリーの言葉に、戦士エイソスは返す言葉がなかった。
「それは、そうかもしれない。アイソニアの騎士は、
わたしの無二の友人であったのだ。それが、
今では、アースランテの国へと亡命しようとしている」
「そこなのです。本来、騎士とは国のために尽くすべきもの。
今のアイソニアの騎士にとって、クールラントは敵国でしかありません。
あなたは、そこのところをよくご存じでしょう?」
「エインスベルにとっても同じことです。いつかは、
国にとって仇為す存在となる。誰がそれを否定できましょうか」
クシュリーの発言には一理があった。戦士エイソスはそのことを否定できなかった。
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