ノクターン/ただのみきや
水辺の仮庵
月は閉じ
口琴の瞑る仕草に川の声
白むように羽ばたく肌の音(ね)の
ふくらみこぼれる光は隠れ
ふれて乱れたこころの火の香
探る手をとり結んだ息に
ふりつむ静寂(しじま)ふつふつと
耳から臍へ金の鍵
獣のぬれてすべる調べに
待てずに満ちて
羽虫も爆ぜる枕辺の
唾におぼれた睦言は
額(ぬか)に咲いてはしなりと落ちた
歌の行方に欹てて
見上げる舟の櫂たおやかに
不動の沈黙
響かない空に磔刑にされたままの
青春の襤褸にモザイクがかけられる
美人だけどよそよそしい
月は環状線に乗って
影がいくつも
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