空にとまる蜂のように/黒田康之
真っ赤な庭のハナミズキからうす赤い葉脈と生まれたての緑を含み笑いみたいに抱いた葉がニョキニョキと出始めている
隣家の藤の花は強く匂って
数匹の黒くてまん丸な熊蜂が空中に静止したまま動いてゆく街を見ている
いつの間にか花が咲くように
僕も瞬間で変わる
変わらないものがあるとしてもそれは僕の本質じゃない
熊蜂がやがて飛行を再開すると
いくつかの落花
でもそれは蜂の羽ばたきではなくって
根源不明な風のせい
ふらふらと落ちる花びらは昨夜の僕のいくつかの数式を帯びて
あらためて黒い地にその身体を横たえる
かつてあった愛しさは
僕の血管の中の数滴の血液とともに
その微かな音を抱きしめている
明日から五月
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