ラジオ切腹/ただのみきや
望の強烈な圧迫に
生の舵取りを奪われたとしても
たましいの腫瘍は切除できない
最初からないものは除けない
それができるのなら
すぐにまた生えても来るだろう
時間は止まらず永遠を通過した
耳をなぞるように夜は開け
太陽は甘く包み紙をほどく
液化した時間の中で時計は溺れている
あなたは白い帆のすべてを解いた休日の帆船
寡黙な揺らめきの照り反し
わたしは青に憑かれたジョナサン
自分を狩ろうとさまようブーメラン
苦行者の知らない求道者には見ない
月と真珠を繋ぐ糸の震えの匙加減
あなたは澄んだ青磁が隠し持つ空ろの失語
微笑みのまま飽和した
美しい混沌の緩慢な散り様を
額の裏で真っすぐ燻らせる
わたしは蜃気楼に溺れる魚の懊悩
形象を捉えようと宙をさまよう舌
占い師の胎を裂く鋏の苦味
愛しさは致死量
あなたに句読点はない
羽化の途上の淡く滲んだ痛点
《2022年2月12日》
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