父とバレンタイン/しょだまさし
今日は2月14日。夫と息子家族と共に父のいる病室に顔を出した。厳格だった父の面影はなく、ひと回り小さくなった寝たきりの老人が眠っている。「お父さん、ひ孫がチョコを持って来てくれたよ〜」と耳元で囁くと薄っすらと目を開いた気がした。先に逝った母を送ると父は後を追う様に伏せる日が増えて今に至った。思えば父の厳しさを嘆くことは思春期だけでなく嫁いだ後も何度もあった。夫の身勝手な転職に憤り実家に帰った時も、息子の反抗期にテメェ呼ばわりされて実家の母に泣きすがった時にも父は私を突き放した。そんな父が涙する姿を娘の私に見せたのは母を看取った時が二度目だった。私は結婚を相談も無く決め、事後報告を聞いた父は何も言わ
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