軋む/ふるる
 
盗んだのは








兄の密葬は静かに行われた
喪服の姉は怒りで美しかった
「あなたは何をしたの」
わたしは何も言えずうつむき
たったひとつの財産である盗癖を詫びるしかなかった

兄のいない兄の部屋で
バイオリンの弦が軋む
ガラス製の昆虫の
交接のような音が聴こえるので

わたしの左手はそれ以来動かない








初出 詩誌『空想』サイト投稿欄2010/06/09 (Wed)(現在は閉鎖しています)
この詩に葉月二兎さんから批評を頂いて、そちらの方がよっぽど詩みたいでいいので
一緒に出したかったけどご本人と連絡がつかないので諦めます……あっでも最後の一文だけ……
「(注2)この詩において三重に(そのためにより強固に)「抹消」されている「父」については、語らずにおいておく。
精神分析は批評ではない。」(←ふぁー!かっこいい!)


戻る   Point(7)