軋む/ふるる
 
その大きな屋敷にわたしの兄姉はいた
少しだけ血が繋がっていたので
わたしは右手で彼らは左手と思うことにした
左手を使う時彼らを思い出した
出されたデザートの皿は欠けていた

兄はとても器用な人で身体が弱く
小さな楽器を作るのが趣味だった
細い弦をはられたバイオリン
音の出ない打楽器
銀のフルート
演奏する楽隊のない人の
さびしい咳 (灰色の咳)

姉は活発な人で滅多に屋敷におらず
けれど部屋に入ることを許されていたので
姉のいない姉の部屋で
目はきょろきょろし続けた
ガラス製の昆虫や
恐ろしげな本があった
外国の香水の瓶を盗んだけれど
すぐに返して次に盗ん
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