詩の日めくり 二〇一九年五月一日─三十一日/田中宏輔
んだのであった。致死量の二倍を服用したのだが、救急病院に運ばれて助かったのであった。病室にいたとき、友だちが本を何冊か持ってきてくれた。そのなかに詩のアンソロジーがあって、呉 茂一さんが訳されたサッポオのつぎの詩が含まれていた。
夕星(ゆうずつ)は
かがやく朝が(八方に)散らしたものを
みな(もとへ)連れかへす。
羊をかへし、
山羊をかへし、
幼(おさ)な子をまた 母の手に
連れかへす。
これが、ぼくと詩とのはじめての出合いであった。しかし、当時はまだ自分が詩を書くなどとは思いもしなかったのであった。自分が詩を書いたのは、27、8歳のころで、自殺未遂を
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