ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
が見舞いに来てくれていたらしい。無理はするな、あとひと月休め、でないと仕事はさせない、と親分が言うので大人しく家に帰った。眠りにつく瞬間には恐ろしくて仕方なかったが、何事もなく朝を迎えることが出来た。ちょっと愉快な夢さえ見た。それは過去と呼ぶしかない頃の夢だった。俺は目覚めるためにシャワー浴び、久しぶりに自分で朝食を作って食べた。なにが失われ、なにが残ったのかまったく分らなかった。だけど、時間は容赦なく更新され、遅かれ早かれ日常は再構築されるだろう。危うく死ぬところだった。でも生きていて、こうして新しい朝を迎えている。人生というやつはとてつもなく残酷なものだ。だけど、そこには必ず未知なる未来が待ち構えていて、日々を乗り越えたものにだけその姿を見せてくれる。俺はもうボロボロの壁かもしれない。だけどまだ横になって眠って、こうして目を覚ますことが出来る。
了
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