秋〜冬/短詩群/ちぇりこ。
 
旅立った
他愛もない会話の行方
取り残され
白い文字で記された
わたし達は
ちいさな
いちょうの葉のように
耳を澄ます

「立冬」

水の影が
日増しに薄くなっていく
母屋の軒下で
折り重なる
秋の死骸を踏みつけながら
血肉を分ける仕草で駆け抜ける
子らの背中越しで甲高く
(百舌鳥だ)
尖端に突き刺さる
干からびた時間のあと先にも
冬が立つ

「水母」

いつの間にか
背を追い越してしまった

透明な
青の中の 青へ

親しい人達の思惑が
交差点を行き交う度に
二足歩行の寂しい生きものが
胎内へと孵ってゆく
薄暮
膝を抱えて座る影の稜線を
水の影が ぼやかせて
悲しい指先で水脈を探り当てるように
また ひとつ背を追い越して

漂う 日々の



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