草野球速報/385
人の仲ほどにテンポよくラリーは続かず
表情が曇りだす
ライトスタンドには子ども連れの主婦たち
手作りのおやつが手渡され
水筒からコーヒーの湯気がたちのぼる
箸が転げても可笑しいらしい
センタースタンドからラジオの野球中継
ジャージ姿の初老の男性は
解説の一語一句に突っ込みを入れながら
時にぼやき時にニンマリ
レフトスタンドのベンチとベンチの狭間に
塾帰りの男の子たちが座り込んで
キラキラとした眼差しの先には
小さな戦場のセット
筆箱砲台から次々と繰り出される
鉛筆ミサイルの標的は
いびつな消しゴムを積み上げた
「タイリョオハカイヘエキ」
高々と舞い上がるファールボール
55度の太陽光に吸収され
悲鳴と視線がレフト方向へ
勇ましい戦士たちが少年に戻る
不規則にバウンドしながら
右往左往しやがて動きを失った白球は
ふたしかな未来のように身を潜めてしまう
探し回る駆け足と笑い声が
木々の緑に反響している
鳥の耳まで届いている
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