遠藤周作 自動筆記/soft_machine
課されたとお眼鏡
円熟するほどにひびを深める沈黙だからこころはふりむきして、ことばは黙する。くもったひとみの反転した映像の果てにみえてくるいのり
踏みつぶしいきる訳をみとめず、踏みつぶされたいのちをしることはない。いつまでも
踏みつぶすとき、またわたしも踏みつぶされ
たべられるとき、またわたしもたべるものになる
わたしは老いた
「もう、いいんじゃないか」
そう問える父はすでにない
あれ地に水まきされたから
アスファルトのにおいをながめつづけた
そうして波のまに問いをうかべる
あなたもまた老いたいっぽんの木
ずっと立ちつづける
わたしが生まれる前から
生まれた後にも
そして消えても
星とともにとおざかってある
かたちないいのちとともに
神とともに
時とともに
ひろがりとともに
いち羽の鷺がゆっくりあゆむ
水面にするどくつきさす
いち匹いさる
はじまる
おわり
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