稜線/山人
冬期間の職種が百八十度変わり、三日に一回は全休で、あとの二日も早朝と夜の勤務も加わるが、ほぼ半日ずつ休めるのだ。その間、妻と低山に登ったり、単独で半日単位の里山に登ったりしていた。しかし、低山は低山だ。わざとらしく律儀に整備された山道はどこかあざとさを感じてしまう。管理をする山岳会や山の会の誠意が痛く感じられ、自然体から逸脱してしまっていると感じるのだ。そして人気の低山には必ず人がいて、絶えず人の匂いが感じられる。そんな中、自分だけの空間、孤高の景観がひどく懐かしく、その世界に溺れたいという欲求が強かった。
家からそのままカンジキをザックに括りつけ、車道から歩き出す。ほぼ、一〇分で今は営業され
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