稜線/山人
 
いるのは
何時間も無益な息を生産し
大量の心拍を重ねたわたし以外になかった

そこにあったのは、あたらしい宇宙
雪原のかぎりないスパンコール
わたしは死亡し新たなる眼球を手に入れる時
生きるというおぞましさからの解放
うまれかわる疾走
瞬間に私の臓器と脳は失われ
紺碧の空へと飛翔をはじめる
神との交わり、神と息を吸い合う

一歩一歩入念に
埋め込んだカンジキの跡を辿る
これは下界への登山
すこしづつすこしづつ
とびちったものたちが私に戻されてゆく
しかし、稜線は私がいなくなっても
まだ輝き続けているだろう
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