稜線/山人
待っていたのは太陽光線を浴び始めた雪の結晶だった
億千の結晶の乱反射が
きら きら、きらと
生き物のように動きながら
わたしひとりの岳人のために
おびただしくひかりは踊っていた
駆り立てるものも、期待も
かすかな望みですらも
そこにはなく
あるのは黎明の朝
寒さは鋭く指に食い込み
ゆるりゆるりとカンジキを埋め込む
降り積もった新雪に私の重さを埋め込む
振り返れば歩いた刻印が続いている
かすかな怯えと焦燥や恐怖
猥雑にそれらが入り組み
私の人体を組織する
だから私は行くのです
わたしを踏みしめるために
雪は白くてキレイ
でも本当の美しさを知っている
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