林檎とミルクの思い出/板谷みきょう
 
二十歳の頃のこと
十三歳年上の既婚の女性に誘われて
ご主人が夜勤で不在の時にだけ
夜の相手をしたことがあった

連絡は彼女からで
人目に付かないよう
夜中に訪問しては肌を合わせ
体を重ねては情事を繰り返した

朝食のメニューはトーストに牛乳
そして林檎
いつもメニューは変わらず
必ず並んで食べて
夜明け前の
暗いうちに帰路に就いていた

一晩に1ダースを使い切ろうと
目論んだが
残り二つで彼女が
音を上げてしまい
それが今も心残りになっている

情欲の求められるままに
汗だくになって荒い息を吐き続け
熟成した肉体から迸る愛液と
淫水が汗に溶け込む
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