投票の朝/末下りょう
ごく少数が多数のように振る舞う絵柄も今日にとっての狂気にはなりえない
(カットと吹き替え、フリップと紙芝居のモーニングショー
認知的不協和音もなく)
窓から見える
英語を日本語に翻訳した条文をドイツ語で読もうとするアカデミックな部落の
残り火
ぼくのもとに届いた叔父からの手紙に雨が一滴 染みて 一票が生まれ
投票箱を聖杯が濡らす
始まりからすべての記念写真は遺影になり すべての置き手紙は遺書になるところ
だからかグレーから出る投票の朝
はぐれた
子供の泣き声のように あちらこちらで猫がないている
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