耳鼻科の名医/壮佑
 
鼓膜の炎症と診断され
メスで切開する簡単な手術を受けた

痛いですよとの説明どうり
痛かった
確かに痛かったが
症状は嘘のように楽になった

あの先生は名医だ
その思いを強くしながら
数日後に再び受診した

「まあだ耳鳴りがしますかの?」
「いえ、ほとんどしなくなりました」
「ふうむ、耳鳴りがしましょうのう…」
(え? しなくなったんですけど)

すかさず女性看護師が飛んで来て
医師の耳に口をくっ付けんばかりに
「し・な・い!」とでかい声
医師は きょとん

足腰もだいぶ衰えておられたが
手術に臨んでは老いてなお矍鑠としていた
あの先生は名医だ 名医なのだ

痛かった
確かに痛かったけど…




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