冬の嵐/ただのみきや
 
で終わる時を逸して
二人の間には一つの愛があった
そんな無邪気な思い込みが夕陽のように
二つの地平にいま沈む
  




少女

真横に吹きつける氷の粒に
媼の仮面の片頬を向ける
少女の朝はまだ蒼い
立ち込める霧の中
最初の光が差し込んで
しずくがきらめき落ちるのを
夜の千切れた影が
新たな鳥に変わるのを待って
待って もう 六十余年
氷の粒が刺さった赤い眼球から
ひとつの花が開き――刹那
           怒涛の彼方



                  《2022年1月15日》








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