四月の空/末下りょう
否定のない拒絶にいすくめられたマスクのなかで 小さく
咳をした
マスクの正しい位置を探しながら電車に揺られ
息で曇る眼鏡の レンズの
向こう
(窓外にあらわれてはきえる 誰もが誰かを守りながら行き交うアスファルトに 誰もが誰かに守られながら建ち並ぶビルの壁に) ちらちらと 光が影に隠れ 鬼ごっこに明け暮れる午後の眩しさにすべての春を刻んでいく
四月の白雲から零れた白い羽ばたきに 落ち着きのない視界を奪われたとき
ソーシャルディスタンスのラビリンスで拾おうとした
明日よりも優しくありたいと願う
明日の昨日から 昨日の明日までの
誰もいるはずのない今日
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