無垢の人/ひだかたけし
 
また白痴な顔を晒し
振り返る君の孤独はやるせない
冬の大空に羽ばたいて
青い大気を吸い込んで
静かに呼吸を繰り返す
君の無垢は無限の広がり
いつかの不在を先取りし
果てなくラアラア唄っていく*

生まれ落ちたのはいつの日か
消えていくのはいつの日か

不断の忘却を反復し
無限の大洋を渡っていく
ラアラア無垢な声響かせ
無限の大洋を渡っていく

(いつしか光りが狼煙上げ
母なる大地を引き裂いて
君の久遠の本性を
眩暈のうちに露わにする
そのとき君は悠然と
快と不快から引き離たれ
未知なる次元へおもむいて
)







*中原中也『都会の夏の夜』より
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