教室/たもつ
僕らの旅は午後の教室から始まる
机の上ではまだら模様の教科書が青い空を目指し
ゆっくりと羽化している
君の強固な筆入れは中身がすべて行方知らずの風紋
象が踏んでも壊れないけど
涙の一粒で簡単に崩壊してしまう
歴史の教師が律令制度に意義を唱えている間
僕らは残しておいた給食のパンを食べ終え
さあ、外へ行こう
昇降口への地図が生臭いのは
日直になれなかった僕らの汗腺が付着しているからだ
学級委員が副委員とよろしくやりながら
左手にできた水イボを潰すことに余念が無い間
さあ外へ!外へ行こう!
歴史の教師はまだ開国されていない浦賀沖に向かって
遥か遠泳をしているぞ
手紙を回せ!
僕らが無駄に生きてるのではないという証に
校庭の隅で積んだクローバーがすべて
四葉だったので恐くなって焼却炉に投げ入れた
いったいあれはいつのことだったか
そのように思い出そうとすると
僕らの旅はいつもそこで終わる
そしてまた
教室は旅を始める
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